時計趣味主流 最終着地点 その2 SEIKO変態クオーツ
Leica MP + Summilux 50mm f1.4 ASPH.
今回のお堅いシーン用ビジネス時計を探すにあたって、最初の時計が父から譲り受けた渋いセイコーの時計だったこともあり、まずはセイコーの時計から探し始めた。それでもクオーツの項はすっとばかして機械式とスプリングドライブのところばかり見ていたのだけど、ふとクオーツの項をみてぶっとんでしまった。
技術者はここまでクオーツムーブメントに変態的な情熱を傾けていたのか!
「正確であること。時刻を読み取りやすいこと。一生つきあえる時計であること。」ということを追求するためにだけに開発された9Fムーブメントに関する変態ぶりを抜粋してお届けしよう。
<重たい針を動かすぜ!>
太く堂々とした針を回したい。ところがクオーツムーブメントの弱点の「トルクがない」という制限から今までのクオーツ時計は一見太い針でも実はぺらっぺらの軽いものばかり。機械式のような立派な針を回すためだけに開発されたのがエネルギーを節約しながら重い針を動かすことができる「ツインパルス制御モーター」。
誰も頼んでいないのだけどやってしまうのだ。
<瞬きより早く変わるぜ!>
腕時計のカレンダーって10時くらいから数字がずれはじめ、12時を過ぎてやっと正しい日付になる。日付を瞬間的に切り替えるカレンダーは、トルクの強い機械式時計ではいくつか例があるがクオーツ式の時計では前例がなかつた。で、セイコーが作ったのは
2000分の1秒で瞬間に変わるカレンダー
2000分の1秒って銀塩LEICAのシャッタースピードより速いやんw。確かにじわじわ変わるカレンダーは気になるっちゃ気になるけど、そこまでする必要はない・・・・でも、技術者はやっちまうんだなぁ。
<びびったらあかんぜよ!>
歯車は「遊び」がなければ回転できない。しかしその「遊び」が秒針の震えの原因になる。この震えを押さえる機構は従来からあったが、その効果にグランドセイコーの開発者たちは満足しなかった。そして機械式時計の心臓部を構成するひげゼンマイ使用の「バックラッシュ・オートアジャスト機構」という新しい方式が開発された。
いやいや秒針の震えってすでに老眼の域の僕には拡大鏡なしでは見られませんわい。でも見えないところのこだわりこそ匠というもの!
<年差も許せねー!>
ほとんどのクオーツムーブメントには調整する方法がないが、この9Fムーブメントには「緩急スイッチ」という機構が搭載され年差レベル調整ができるそうな。でもあまりに狂わないので出番はないとか。
出番がないのに鎮座するスイッチ・・・・出番がないことが良い事という好事例ではなかろうか。
<9Fさ~ん、体温、計りますね>
クオーツの水晶振動子は温度変化に弱い。1秒間に32,768回という振動数が、温度によって上下してしまうのだ。そこで9Fムーブメントは時計内部の温度を1日に540回、センサーで測り、水晶振動子の基準からずれた振動数を検知し、その誤差を補正している。
ここはかわいらしいナースさんが一日540回も検温してくれると思ってくれたまえ。
いかがだろう。機械式のムーブメントも日々マニアックな改良が行われているのだろうけどクオーツムーブメントならでは技術者のこだわりがここまである。クオーツ時計も十分趣味の時計として愛せるのだ。
つづく
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