感覚を伝えるということ (後編)
MINOLTA CLE + M-ROKKOR 40mm f2.0
写真の世界もそうで、初心者に向けての基本説明はとにかく絞りとシャッタースピード、露出の決め方、補正の仕方、などカメラの構造による物理的な裏づけのあることばかりです。構図の決め方や光の取り入れ方もひととおり「セオリー」が存在します。
ただ、問題はそこからなのです。「なにがいい写真か」「どうやればその時の気持ちを写真で現せるか」「感動する写真って何?」などの領域に入ったとたんその感覚の表現はいきなりあいまいになり、説明しにくくなるのです。そこを無理に説明しようとするので「空気感」「感触」「心の距離感」「心情風景」といった表現になるのですが、少なくとも物理的な表現でこれらを伝えてもらうよりはなんとなく雰囲気でも納得してしまう部分があります。
ただはこういった感覚言葉は実感がわかない時には
「何言ってやがんでいっ。わけのわからん事を」
と思ってしまいますが、そのうち自分がそういった感覚を人に伝える立場になって初めて感覚を言葉にする難しさがわかることになるのです。語彙が比較的豊富な人はその表現が文学的になったり、哲学的になったりしてそれぞれ個性が出るんじゃないでしょうか。ちなみに長嶋茂雄さんは語彙の引き出しがあまりに少ないため、あの天才の感覚を言葉で伝えようとしても「そこはそれぴゅ~っとですね」「どどんといって、ぱっといくんですね」という表現になってしまうのです。
でも語彙豊富でなければそういったものは伝わらないのでしょうか。いやむしろ長嶋さんの表現の方が感覚としては伝わる気がしてきました(笑)
長嶋さんがもし写真上級者なら中級者へのアドバイスで「こういう景色はぱっと見て、きゅっと感じたことを、どど~んと心に展開しながら、にゅにゅぽっとシャッターを押すんだよ」とかアドバイスしていたのではないでしょうか。(伝わるかどうかは長島さん次第ですが)
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コメント
こんばんは~
いつもいろいろなお話、私にはとっても勉強になっています。
『感覚で伝える・・・』長島さんを例にたとえられてさらに納得しました(笑)
感覚を伝えるって事難しいですよね~
私ももしかしたら長島さん的な表現になっているかも知れませんね(苦笑)
投稿: yuche | 2005/07/02 21:38
>yucheさん
人には伝えなくても自分の頭の中で感覚をイメージすることってありません?ビリヤードでブレイクする時、体中がスプリングになったイメージを作ってストロークします。
さすがに人にこのようにイメージしなさいとは言いませんが(笑)
投稿: Shig | 2005/07/02 23:45
Shigさん こんばんわっ♪
いつもお世話になっております。
とっても解かりやすい説明で楽しかったです。
うん、確かにこの写真はどう撮りましたかぁって聞かれると難しいですね。
yorikoは良く、ファインダー覗いていると
ビビビビッて来るんですよ。ってよく言いますが此れでは説明した事になりませんよね(笑)
でも、何かを感じて撮ったものってしっかりと
相手に伝わるんですよね。
綺麗な写真を撮る事は基本どおり撮って
いたら間違いなしに撮れますね。
でも、相手に何かを感じ取って貰うって
さて、どうしたものでしょうね~
シャッターを切る回数だけは誰にも負けていないと思いますが説明は難しいですね。
Shigさんのphoto.eyeどのお写真も大好きです。では、ありがとうございました。
投稿: yoriko | 2005/07/03 00:10
表現したい事を言葉で表現出来ないから写真を撮ってます。(笑)
現実世界を写しているのに、曖昧さと常に隣り合わせ。そんな写真の曖昧さってのが面白く、写真表現の奥の深さなんですよねー。
話ずれちゃいました!?
これからも宜しくお願い致します。
投稿: yasu | 2005/07/03 16:37
>yorikoさん
撮った写真を言葉で解説すればするほど陳腐なものに見えてきてしまいます。何か後付でこじつけているような不自然さ・・・。でも「その時どう感じて撮ったか教えてくださいっ」ってうるうるした目で見られたらどうします?(笑)
なんか気の利いた言葉のひとつくらいは用意しておきたいのですが、さてどうしましょう(笑)
>yasuさん
いや、まさにその通りだと思います。カメラはレンズを通して物理的にフィルムに焼き付ける作業を淡々とこなす工業製品にしか過ぎません。その結果である写真に人は何故涙したり、ほっとしたり笑ったりするのでしょう。
そういった言葉では説明できない表現だからこそ写真に惹かれて撮っているんですよね。
本宅のギャラリーも拝見しました。・・・・すごい・・・・・見入ってしまいました。またブログにも遊びに行きますので今後ともよろしくお願いしますね。
投稿: Shig | 2005/07/03 18:15