偏食日記 ちょっとだけ迷惑なシェフ
Leica M5 + NOKTON classic 40mm f1.4 SC
私の勤めている会社には社員食堂があるのですが、さすがに何年も食べているといくらメニューが変わろうともさすがに飽きてきます。いつからかほとんど会社の外で食事をとるようになってきました。
今日ご紹介するお店は残念ながら今は閉めてしまっているのですが、このお店ほど周りの評価が分かれていたところはありません。
「二度と行くかいっ!あんな店」
「この値段であの味を堪能できるなんて奇跡や」
冷静な判断としても実は両方正しいのです。シェフはこれぞ職人という好々爺で、かつてはヨーロッパで修行し宮廷料理も手がけたという噂です。フランス風ビーフストロガノフがライスとセットで650円!バターの風味も豊かな絶品です。ここまでの話ではすべての人に評価されそうなものなのですが、実はこのシェフが相当変わり者なのです。
とにかく気に入った客とそうでない客との対応が半端でなく極端なのです。
道楽で始めたお店ですからもうシェフのやりたい放題。あまりの暴言に食事の途中で席を立つ客が続出。かといって威張っている寿司屋のような感じではなくキャラ的には愛せる類だったように思います。で、私ですが実はこのシェフになぜか目茶目茶気に入られていたのです。あからさまに他の人よりお肉の量が多かったりと嬉しい反面「そこまで結構なんですけど・・」と言ってしまいそうなほど好待遇でした。さらに強烈なエピソードも・・・・。
お昼休み、少し遅れてそのお店にいった私はかろうじて空いていたカウンターに座ります。この日は炊飯器のひとつが調子悪かったらしくすぐに出せるライスはあと3人分。お店にはまだ料理を待っているお客さんが約10人。次のライスが炊けるまで15分はかかるということでおかみさんは謝りまくっています。私は最後の客でしたのでライスが炊けるまで待つつもりでした。
「よう、いらっしゃい!ごめんね今日は混んでる上に炊飯器の調子が悪くて」
「いえいえ、急ぎませんしいいですよ。」
「お、なんや3人分はライス残ってるんかいな。他の人はええからこちらに出し」
「僕、最後ですし待ちますからいいですって・・・」
「かまへん、かまへん、今日の客の顔知らん奴ばっかしや。待たしとったらええねん」
待っている客がすごい形相で私の方を睨みます。
「いや、本当にいいんですって・・・・」(勘弁してくれぇ~)
「ほいっ、お待ち!」
私の懇願などどこ吹く風、いつもより多いライスと例のビーフストロガノフが私の前に置かれました。
「やってられるか」と言い残し数人の客が席を立ちます。これほど居心地の悪い昼食は後にも先にもこの時だけです。シェフはというと帰った客のお水を片付けながら「かっかっかっか」と笑っています。
このシェフへの評価はそれぞれだと思います。客商売としてはいかがなものかと思われるかもしれません。ただ、私も引退後は皆に好かれる優しいおじいさんになってしまうより、こんなちょっと迷惑な自由爺さんにちょっと憧れたりもするんですよね。
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コメント
そんなお店が存在するって事は やはり味は認められているって事でしょうかね
でも ちょっとバツ悪かったですね 先に来ていたお客さんをさしおいて 出されてもたべずらいですもんねw
投稿: tomo | 2005/05/26 17:30
>tomoさん
いやあ、本当に食べるのが辛かったです(笑)。あの後からは混んでいる時間には行かないようにしていました。空いているとゆっくり食べられるかというと、それはそれでシェフの昔話を聞かされるのですが・・・
投稿: Shig | 2005/05/27 03:48
かなり難ありですが、ええオッサンですな~
ちなみに中古カメラ屋も 「これ、どないですのん?」 「それはアカン。やめとき」 と正直に教えてくれるまで通い詰めると、いい買い物ができるようになります(笑)
投稿: 秀丞 | 2005/05/27 08:59
>秀丞さん
そうですねぇ。店員さんとお客の関係はなんか馴れ合いのそれよりはちょっとクセのある関係の方が緊張感の中に楽しみも感じますね。
頼り切ってしまうより、ちょっと試されているようなやり取りっていいですよね。
投稿: Shig | 2005/05/27 23:12