「安井仲治-僕はこんな美しいものを見た-」展
Leica MP + Summicron 35mm f2 (6elements)
今日、兵庫県立美術館のコレクション展である『「安井仲治-僕はこんな美しいものを見た-」展』を見に行きました。
恥ずかしながら、つい最近まで安井仲治氏(1903~1942)に関してはほとんど知りませんでした。日本を代表する写真家ということで見に行ったところ・・・・・
ゆきこんさんのフォトブログ「道草カメラ」でも言及されているのですが、ハービー・山口さんの記事(PHaT PHOTO)があちこちで波紋を生んでいます。
あるギャラリーのキュレーターの「今求められているのは人を出し抜く写真である」という発言に対しハービー氏は「写真に大切なのはオリジナリティーではなく何を表現したいかである」と述べています。最近の写真でありがちな「とりあえず人を違う表現を・・」「わかりやすい写真は作品じゃない」「面白ければそれでいい」といった安易な傾向に対しての警鐘として私自身も考えさせられる記事でもありました。
で、そんな中の安井仲治展です。
少し過激ではありますが、「人を出し抜く写真が個性である」と思っている人達へ。貴方達のやっている小手先の工夫なんか1930年代に安井仲治氏が一千倍も高いレベルですでに実践されていますよと言いたい。安井氏の写真はプリント、被写体こそその時代のものでありながら現在の写真表現のすべてが凝縮されているといっても過言ではないでしょう。
さらに安井氏はそういった表現技法を単に実践するだけでなく、その時代を的確に捉え、かつ我々に訴えかける芸術作品として写真を昇華させているのです。
こういった先進的な技法を実践しながら氏は以下のように語っています。
写真家にとって何より大切なのは「作者の眼の教養であり、敏感な感受性」である。写真とは要するに『僕はこんな美しいものを見たよ』と報告すればいいのである」
(安井仲治)
目からうろこが大量に落ちました。
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コメント
こんばんは。関連記事TBありがとうございます。
写真が安易で表層的な方向に向かってしまうのは、アマチュアから見てもなさけないことです。いやむしろ、たとえ(一部の)プロが安易な方へ走っても、アマチュアだからこそ本物の写真魂みたいなのを忘れたくないなと思います。
「こんな美しいものを見たという報告」。シンプルで、核心。
世間知らずのわたしは最近になって安井仲治さんの名前を知ったのですが、この人に関する評価をいろんなところで読んでどんどん関心が湧いてきて、一度はこの人の作品を見てみたいと思うようになりました。どんなすごい作品なんだろう!
と思ったら、兵庫県立美術館で開催中なのですね。期間中に必ず見に行こうと決めました。
投稿: ゆきこん | 2005/05/08 00:50
>ゆきこんさん
安井仲治展は7月3日までやっていますので、時間的にはまだ余裕ですね。5月17日に60点ほど入換えがあるそうなので私はまた行くつもりです(笑)
ちなみに安井仲治展は常設コレクション扱いなので他の常設をあわせて500円というお得な展示。なおかつ・・・・常設展は「三脚」「フラッシュ」を使わなければ撮影OK。常設展示のオブジェを安藤忠雄氏の建物と一緒に撮るもよし、映りこみを撮るもよし、当然地中美術館と違って県立美術館は外観、内観ともに撮影OKですからこんなに美味しい美術鑑賞はありません。
また、駅はJR灘駅なのですが、その周りの線路沿い(特に阪急沿線)の建物がまた廃墟チックでそそります。お時間があれば駅からちょっとだけ足を伸ばされてもよいかと・・・。
投稿: Shig | 2005/05/08 10:07
カメラはそこにあるものを 「写し撮る」 道具。厳密な意味でのオリジナリティなんざあるはずもない、と思います。人間だって、両親の遺伝子を半分ずつ複写してますよね(笑)
出し抜き傾向は雑誌の月例とかコンテストなどが拍車をかけているのかもしれませんが、ぼくは 「一発もの」 よりも、ジワリと長く写真を楽しむことを選びます。写真に限りませんけど、せっかちといいますか、一攫千金傾向が目立ちますね。途中を省略してポンと結果ばかり欲しがるのはいかがなもんでしょう。
投稿: 秀丞 | 2005/05/09 01:31
>秀丞 さん
結果的に瞬発力のある写真になる分には全然構いませんし、あえて狙ってみるのもよいと思っています。ただ、そればかりを狙ってしまっては自然な視線が逆に濁ってしまうような気がします。自分の感受性で美しいと感じたものを表現するためにいくつかの手法はあるでしょう。ただ、きちんと順を追って表現してゆけば、何故それを写し撮ったかの過程はその写真からおのずと伝わってくるものですし、そういった写真を楽しみたいですね。
投稿: Shig | 2005/05/09 12:41
Shigさん、こんばんは。
遅まきながら、TBさせて頂きました。いつも刺激を与えて頂き、ありがとうございます。
秀丞さんへのコメントにも書いたのですが、写真家の固有名詞が肥大化すればするほど、「写真」そのものよりも、その写真家の「概念」を消費しているのかもしれません。そのことを最大限愉しむ人が篠山紀信とアラーキーだとすれば、森山さんはそのことに葛藤を抱く人、ということになるような....。
投稿: marmotbaby | 2005/05/12 02:30
>marmotbabyさん
TBありがとうございました。
実は私もmarmotbabyさんに刺激を受けてマウント主義からスリーブに転向しようかと思ってたりします。「否応無い時系列」と言われていたのに引っかかってまして・・・。今、頭の中を整理中です。
投稿: Shig | 2005/05/13 22:50
「安井仲治-僕はこんな美しいものを見た-」展 は、私も見に行きたいと思っています。
Shig さんのブログを読んでさらに見てみたくなりました。
県立美術館は内観も撮影OKだったんですね
外観は撮ったことがあるのですが、中も撮っていいと初めて知りました。
投稿: マツバラ | 2005/05/19 09:17
>マツバラさん
県立美術館はイベントのギャラリー以外は基本的に内外ともに撮影OKなはずです。(三脚、フラッシュはダメですが)
私も少し不安だったので館員さんに聞いてから撮影しました。規則が変わっているかもしれませんので、一応聞いてから撮られることをおすすめいたします。
投稿: Shig | 2005/05/19 22:03
はい、わかりました
投稿: マツバラ | 2005/05/22 07:45
安井仲治で検索して、最初にヒットした方でしたし
コメントがよかったので、TBとリンクをはらせて
いただきました。
都合が悪ければお知らせくださいませ。
そういえば、芸術の館ではデジ一をぶらさげたままでしたが
何もお咎めがありませんでした。
たいてい何かひと言言われるんですけれどね。
投稿: 慧(ケイ) | 2005/06/27 19:45
>慧(ケイ)さん
TBありがとうございました。都合が悪いなんてとんでもない。ご訪問いただきありがとうございます。
素敵なアートな一日だったようですね。ミヒャエル・ゾーヴァ展にはいくつもりなのですが、京都駅は近所すぎてかえって行きそびれています。終わってしまう前に行かねば・・。
投稿: Shig | 2005/06/27 23:17